アトピー性皮膚炎とカゼインフリー:乳製品を避ける生活のススメ
[更新日]2024/08/07 63 -
アトピー性皮膚炎の患者にとって、食生活は症状の管理において重要な役割を果たします。
中でも、乳製品とその主要成分であるカゼインがアトピー性皮膚炎に与える影響についての理解は、食事療法を考える上で重要です。
この記事では、アトピー性皮膚炎における乳製品の影響、カゼインフリー食品の選択肢、およびカゼインを避けることの実際的な方法について解説し、アトピー性皮膚炎の改善方法についてご紹介します。
1. アトピー性皮膚炎とカゼイン(乳製品)の関係について
カゼインとは何か
カゼインは、牛乳や乳製品に含まれるタンパク質の一種です。牛乳タンパク質の約80%を占め、α-カゼイン、β-カゼイン、κ-カゼインの3種類に分類されます。
カゼインは、牛乳中では水に溶けずにコロイド状の粒子(カゼインミセル)を形成しています。
このカゼインミセルは、牛乳の白濁の原因となります。
カゼインは、チーズやヨーグルトなどの乳製品の製造にも利用されています。
チーズの場合、カゼインが凝集することで固形物が形成されます。
ヨーグルトの場合、乳酸菌がカゼインを分解することで、独特の風味が生まれます。
カゼインは、牛乳アレルギーの原因となることもあります。
牛乳アレルギーを持つ人は、カゼインを摂取すると、じんましん、腹痛、下痢などの症状が現れることがあります。
なぜカゼインがアトピー性皮膚炎に影響を与えるのか
近年、アトピー性皮膚炎とカゼインの関係が注目されています。
アトピー性皮膚炎は、皮膚の炎症が慢性的に続く疾患であり、原因は完全には解明されていません。
しかし、遺伝的要因や環境的要因が関係していると考えられています。
カゼインは、腸管のバリア機能を低下させる可能性があることが分かっています。
腸管のバリア機能が低下すると、腸内から炎症物質が体内に侵入しやすくなり、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があります。
また、カゼインは、体内で分解されてアミノ酸になると、ヒスタミンという物質が生成されることがあります。
ヒスタミンは、皮膚の炎症やかゆみを引き起こす物質です。
これらのことから、カゼインの摂取がアトピー性皮膚炎の症状悪化に影響を与える可能性があると考えられています。
アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関連
食物アレルギーがアトピー性皮膚炎に与える影響
食物アレルギーがある場合、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があります。その理由は以下の通りです。
・皮膚のバリア機能低下
食物アレルギーがあると、腸管のバリア機能が低下することがあります。腸管のバリア機能が低下すると、腸内から炎症物質が体内に侵入しやすくなり、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があります。
・ヒスタミン産生
食物アレルギーがあると、体内で分解されたアミノ酸からヒスタミンという物質が生成されることがあります。ヒスタミンは、皮膚の炎症やかゆみを引き起こす物質です。
・悪玉菌増加
食物アレルギーがあると、腸内環境が悪化し、悪玉菌が増殖することがあります。悪玉菌が増殖すると、腸内から炎症物質が産生され、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があります。
乳製品がアトピーの症状を悪化させる可能性
アトピー性皮膚炎と乳製品の関係については、近年多くの研究が行われており、乳製品がアトピーの症状を悪化させる可能性があることが示唆されています。
乳製品には、カゼインや乳糖などのタンパク質が含まれています。
これらのタンパク質は、腸管のバリア機能を低下させる可能性があり、これがアトピー性皮膚炎の症状悪化につながると考えられます。
腸管のバリア機能が低下すると、腸内から炎症物質が体内に侵入しやすくなり、皮膚の炎症やかゆみなどのアトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があります。
研究事例と科学的見解
カゼイン分解物の摂取とアトピー性皮膚炎の改善
カゼインを高度に分解した「カゼイン加水分解物」を摂取すると、アトピー性皮膚炎の症状が改善する可能性があるという研究結果があります。
カゼイン加水分解物は、抗原性が低いため、アレルギー反応を引き起こしくいと考えられています。
表皮角化細胞産生カリクレイン関連
カゼインがアトピー性皮膚炎に与える影響に関する研究があり、表皮角化細胞産生カリクレイン関連の研究が行われています。
皮膚の状態改善
カゼインを含む食品の摂取が皮膚の水分量、明度、刺激応答性にどのような影響を与えるかについての研究も存在します。
これらの研究は、アトピー性皮膚炎の治療や管理において、食事が果たす役割を理解する上で重要です。
ただし、個々の患者におけるカゼインの影響は異なるため、専門家の指導のもとで適切な食事管理を行うことが推奨されます。また、科学的な見解は常に更新されるため、最新の研究結果に注意を払うことが重要です。
2. アトピー性皮膚炎のかゆみや炎症を抑えるカゼインフリー食品の選択
カゼインフリー乳製品の紹介(乳製品代替品を含む)
カゼインフリー乳製品とは、牛乳や乳製品に含まれるタンパク質であるカゼインを含まない乳製品の代替品です。
乳製品アレルギーやカゼインフリーの食事療法をしている方にとって、カゼインフリー乳製品は重要な選択肢となります。
市場にはさまざまなカゼインフリー食品が販売されています。以下は、最も人気のあるカゼインフリー食品のほんの一例です。
・カゼインフリーミルク
アーモンドミルク、ライスミルク、ココナッツミルク、ソイミルクなど、種類豊富。牛乳の代わりにシリアルにかけたり、スムージーを作ったり、料理に使ったりできます。
・カゼインフリーチーズ
ナッツ、豆乳、ココナッツミルクをベースに作られています。スライスチーズ、シュレッドチーズ、クリームチーズなど、種類も様々。
・カゼインフリーヨーグルト
ナッツ、豆乳、ココナッツミルクをベースに作られています。プレーン、フルーツ、バニラなど、フレーバーも豊富。
・カゼインフリーアイスクリーム
ナッツ、豆乳、ココナッツミルクをベースに作られています。バニラ、チョコレート、ストロベリーなど、定番フレーバーから変わり種まで楽しめます。
カゼインフリー食品を購入する際は、必ずラベルをよく確認して「カゼイン不使用」の表示があることを確認しましょう。表示がない場合は、カゼインが含まれている可能性があります。
カゼインフリー食品は、通常の食品よりも高価である場合が多いです。
これは、カゼインフリーの原材料や製造工程にコストがかかるためです。
購入前に予算を立てておくことをおすすめします。
カゼインフリーの食事療法に関する質問がある場合は、医師または栄養士に相談してください。
3. カゼインを避けるための食事管理
カゼインフリーの食事例
カゼインフリーの食事は、牛乳、乳製品、加工食品など、カゼインを含む食品を避ける食事です。
以下は、カゼインフリーの食事例です。
朝食
- 卵焼き
- ヨーグルト(カゼインフリーのもの)
- フルーツ
- ナッツ
- シリアル(カゼインフリーのもの)
昼食
- サラダ
- 鶏肉や魚のグリル
- 雑穀米
- 野菜スープ
- 豆乳スムージー
夕食
- 豆腐ハンバーグ
- 野菜炒め
- 玄米
- 味噌汁
- フルーツ
間食
- フルーツ
- ナッツ
- カゼインフリーのクッキー
- カゼインフリーのチョコレート
飲み物
- 水
- お茶
- コーヒー
- 豆乳
食事での交差反応を避ける方法
カゼインフリーの食事をしても、カゼインを含む他の食品を摂取してしまう可能性があります。
これは、交差反応と呼ばれる現象です。
交差反応とは、ある食品に対するアレルギー反応を持つ人が、別の食品を食べると、似たような症状が現れることを指します。
カゼインフリーの食事で交差反応を避けるためには、以下の点に注意する必要があります。
・食品ラベルを注意深く読む
食品ラベルには、すべての原材料が記載されています。カゼインが含まれていないことを確認するために、すべての原材料を注意深く読むようにしましょう。
・カゼインフリーの食品を選ぶ
カゼインフリーの食品は、スーパーマーケットや自然食品店で販売されています。カゼインフリーのパン、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームなどの食品を購入することができます。
・外食をするときは注意する
外食をする場合は、レストランにカゼインフリーの食事を提供しているかどうかを確認してください。カゼインフリーのメニューを提供していない場合は、サラダやスープなどのシンプルな料理を注文することができます。
疑わしい場合は食べるのを避けましょう。食品がカゼインフリーかどうか分からない場合は、食べるのを避けるのが賢明です。
アトピー性皮膚炎の改善例と患者の体験談
アトピー性皮膚炎で困っていた私は、まず食事療法に着手しました。
そもそもアトピー性皮膚炎は現在の治療では治る物ではなく、症状が出ないように抑えていくものだと考えております。
この思考になったのは、東京練馬区にある藤澤先生にご教授いただいたものです。
それから、食事療法を覚え、糖質制限、ヒスタミンの多い食事の抑制、カゼインフリーを続けており、かゆみの症状は収まっています。
カゼインが直接影響しているわけではなく、乳製品をうまく消化できないため、腸内環境があれ、かゆみや赤みなどの炎症が出てしまうと考えています。
実際グルテンや乳製品をとると、すぐにかゆみや赤みとなって反応するため、グルテンフリー、カゼインフリーの食事管理をしています。
4. アトピー向けのサプリメントのおすすめ
アトピー症状を緩和するための栄養補助
アトピー性皮膚炎の症状を緩和するのに役立つ可能性のある栄養補助食品がいくつかあります。
特にグルテンフリーとカゼインフリーの製品を選ぶことで、アトピーの改善に寄与できます。ただし、サプリメントは医療機関での治療の代替品ではありません。
医師や管理栄養士と相談し、自分に合ったサプリメントを見つけることが重要です。
以下に主要な成分とその効果について紹介します。
・オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は、抗炎症作用があり、アトピー性皮膚炎の症状を改善するのに役立つ可能性があります。魚油、亜麻仁油、えごま油などの食品に豊富に含まれています。サプリメントとしても入手できます。
・亜鉛
亜鉛は、皮膚の健康に不可欠なミネラルです。亜鉛が不足すると、皮膚の炎症が悪化する可能性があります。亜鉛は、肉類、豆類、全粒穀物などの食品に豊富に含まれています。サプリメントとしても入手できます。
・ビタミンD
ビタミンDは、免疫システムを調節するのに役立つビタミンです。ビタミンDが不足すると、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する可能性があります。日光に当たることでビタミンDを生成できますが、サプリメントからも入手できます。
・プロバイオティクス
プロバイオティクスは、腸内細菌の健康を改善するのに役立つ有益なバクテリアです。腸内細菌の健康がアトピー性皮膚炎に関連している可能性があるため、プロバイオティクスは症状を改善するのに役立つ可能性があります。ヨーグルトやサプリメントなどの食品にプロバイオティクスが含まれています。
・K-2乳酸菌
酒粕由来の植物性乳酸菌で、カゼインフリーです。善玉菌を増やし、腸内環境を整えることで、便秘や下痢などに対する効果が期待されています。
また、アトピーのかゆみなどのアレルギー症状を緩和するとされています。効果を実感するには、継続的な摂取が重要です。
K-2乳酸菌についての記事はこちら
アトピー性皮膚炎におすすめのK-2乳酸菌とは
・ヒアルロン酸
ヒアルロン酸は、もともと真皮や関節などに存在し、皮膚の弾力や潤いを保つ役割を担っています。サプリメントとして摂取することで、体全体の水分量を増加させ、皮膚を潤し、痒みや炎症を改善する効果が期待できます。
K-2乳酸菌のサプリメント「アトクリア」について
アトピー性皮膚炎患者向けのサプリメントとして販売されている「アトクリア」は、アトピー性皮膚炎にエビデンスがある「K-2乳酸菌」と「ECME」という低分子ヒアルロン酸を配合した無添加のサプリメントです。
「K-2乳酸菌」は、1日あたり200mg(2000億個)ヨーグルト20個分が配合。
ヒアルロン酸「ECME」は、1日あたり600mg配合されています。
別名ECMEは食べるヒアルロン酸とも言われており、吸収力が高く、お肌の潤いを平均2週間で体感する即効性があります。
この2つの成分を同時に摂取できるカゼインフリーの「アトクリア」は、アトピー性皮膚炎で悩んでいる方にとって魅力的なサプリメントと言えるでしょう。
安全性と効果的な利用方法
アトピー性皮膚炎の症状を緩和するためにサプリメントを検討している場合は、安全性と効果的な利用方法について理解することが重要です。
安全性
- 服用前に医師に相談する
- 薬との相互作用に注意
- 過剰摂取は避ける
- 効果は人によって異なる
効果的な利用方法
- 効果が出るまでに数週間かかる場合がある
- 効果が感じられない場合は医師に相談
- 食事療法など他の治療法も継続
- 副作用が現れたら服用中止し医師に相談
- 子供でも摂取可能なサプリメントは、半分くらいの量で体のサイズにあう飲み始めるのがおすすめです。
5. まとめと今後の展望
カゼインフリー食がアトピー性皮膚炎に与える総合的な評価
カゼインフリー食は実用的であり、食事療法を通じてアトピー性皮膚炎の症状を緩和する手助けになります。
しかし、個々の体質や症状に合わせて選択することが大切です。専門家の指導を仰ぎながらバランスの取れた食事を心掛けましょう。
将来の研究方向性と期待
カゼインとアトピー性皮膚炎の関係については、多くの研究結果から、カゼイン摂取がアトピー性皮膚炎の症状を悪化させる可能性があることが示唆されています。
今後の研究により、カゼインとアトピー性皮膚炎の関係をより深く理解し、より効果的な治療法や予防法の開発に繋げることが期待されます。
アトピー性皮膚炎治療に役立つ情報として、以下の記事でも紹介しています。
ぜひ参考にしてくださいね。
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執筆者について
プロフィール
フリガナ: ワカヤマ ヒサト
名前: 若山 尚登
保有資格: 薬剤師、日病薬薬学認定薬剤師、YMAA認証マーク資格
職業: 薬剤師
経歴:薬学部卒業後、製薬会社にてMRを経験したのち、病院薬剤師へ転職。現在は病院薬剤師として働きつつ、医療ライターとして医療・薬に関わる記事の執筆に取り組んでいます。
自己紹介: 自身の経験を生かした幅広い視野で、医療の現場を伝えていくことがモットーです。薬剤師としてだけではなく、一医療人として人々の健康に役立ちたいと日々勉強に励んでいます。