アトピー性皮膚炎とヒスタミンの関係性:アトピー性皮膚炎のかゆみを抑えるための新しいアプローチ
[更新日]2024/08/01 298 -
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が慢性的に繰り返す皮膚疾患です。
近年患者数は増加しており、社会的な問題となっています。その中でも、最大の悩みとなるのが強いかゆみです。
近年、このかゆみに深く関与していると考えられているのがヒスタミンという物質です。
ヒスタミンは、アレルギー反応に関わる体内物質で、ダニやハウスダストなどのアレルゲンが侵入すると、免疫細胞から放出され、かゆみ、赤み、腫れなどの症状を引き起こします。
アトピー性皮膚炎患者さんの皮膚はバリア機能が低下しており、外部刺激を受けやすい状態にあります。そのため、アレルゲン以外にも、汗や乾燥、ストレスなどのちょっとした刺激でもヒスタミンが過剰に放出されやすくなっています。
さらに、かゆみによって掻きむしると、皮膚が傷つき、さらにバリア機能が低下し、ヒスタミンが放出されやすくなるという悪循環に陥ります。
この悪循環を断ち切るために、ヒスタミンを抑制することが重要です。従来の抗ヒスタミン薬に加え、近年では新しい作用機序の薬剤も開発されており、アトピー性皮膚炎のかゆみ治療に新たな希望を与えています。
この記事では、最新の研究成果に基づいて、ヒスタミンがどのようにかゆみに影響を与え、それがアトピー性皮膚炎の症状悪化に繋がっているのかを、分かりやすく解説します。
さらに、ヒスタミンを抑制することで、あのつらい痒みや症状を改善できる可能性についてもご紹介します。
アトピー性皮膚炎のかゆみを誘発する原因のヒスタミンとは?
ヒスタミンは、体内のアミノ酸であるヒスチジンが、ヒスタミン脱炭酸酵素という酵素の働きによって生成されます。
この酵素は主に肥満細胞や好塩基球などの免疫細胞に存在し、アレルギー反応や炎症が起こった際に活性化されます。
活性化した酵素は、ヒスチジンからヒスタミンを切り離し、体内に放出します。放出されたヒスタミンは、血管を拡張したり、神経を刺激したりすることで、かゆみ、赤み、腫れなどの症状を引き起こします。さらに、かゆみによって掻きむしってしまうと、皮膚が傷つき、さらにヒスタミンが放出されるという悪循環に陥ります。
2. ヒスタミンを制御する治療方法
ヒスタミンは、かゆみや炎症に関与する体内の化学物質です。抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの作用をブロックすることで、アトピー性皮膚炎の症状を緩和するのに役立ちます。
抗ヒスタミン薬の種類と特徴
抗ヒスタミン薬は、大きく2種類に分類されます。
第一世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど):効果が強い反面、眠気などの副作用が出やすい。
第二世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジンなど):眠気などの副作用が出にくいのが特徴。
注意点として、抗ヒスタミン薬はかゆみなどの症状を緩和する薬であり、アトピー性皮膚炎そのものを治す薬ではありません。また、同じアレルギー疾患として、花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎にも使用されます。
食事やライフスタイルの調整によるヒスタミンレベルの管理方法
アトピー性皮膚炎の症状を軽減するためには、薬による治療だけでなく、食事やライフスタイルの調整により、体内のヒスタミンレベルを下げることも重要です。
ヒスタミンレベルを下げるための食事のポイント
ヒスタミンを多く含む食品を控える
以下の食品は、ヒスタミンを多く含むので、控えることをおすすめします。
・加工食品:ソーセージ、ハム、ベーコン、チーズ、魚肉ソーセージ、ツナ缶、缶詰、漬物など。
・発酵食品:キムチ、納豆、味噌、漬物、ぬか漬け、ヨーグルト、チーズなど。
・魚介類:マグロ、カツオ、サバ、イワシ、サンマ、イカ、エビ、カニ、ウナギなど。
・果物:イチゴ、キウイ、バナナ、アボカド、オレンジ、グレープフルーツ、パイナップルなど。
・野菜:トマト、ナス、ほうれん草、タケノコ、アスパラガス、ヒスタミン菜など。
・アルコール飲料:ビール、ワイン、日本酒、リキュールなど。
・チョコレート
・ナッツ類:ピーナッツ、クルミ、カシューナッツなど。
・豆類:大豆、小豆、えんどう豆、そら豆など。
・香辛料:カレー粉、唐辛子、胡椒、ワサビなど。
ヒスタミンを分解する酵素を多く含む食品を積極的に摂取する
以下の食品は、ヒスタミンを分解する酵素を多く含むので、積極的に摂取することをおすすめします。
・パイナップル
・パパイヤ
・キウイ
・玉ねぎ
・ブロッコリー
・ヨーグルト
その他
以下の生活様式は、ヒスタミンレベルを下げる効果が期待されます。
・新鮮な食品を食べる 。
・よく噛んで食べる。
・規則正しい生活を送る。
・適度な運動をする。
・入浴する。
ヒスタミン以外に痒みや赤みを抑えるアトピー性皮膚炎におすすめのサプリメント
アトピー性皮膚炎に悩む方には、サプリメントが役立つことがあります。以下に、アトピー性皮膚炎向けのサプリメントとその成分を紹介します。
乳酸菌
・乳酸菌は腸内で大腸菌などの悪玉菌の繁殖を抑えて腸内環境を整えます。
・「K-2」「L-55」「L-92」などの乳酸菌がアトピー性皮膚炎によるかゆみなどのアレルギー症状を緩和するとされています。
ヒアルロン酸
・ヒアルロン酸を経口摂取することで皮膚の水分量を維持して乾燥を防ぐ働きがあります。
・経口摂取したヒアルロン酸は大腸で腸内細菌により分解されて、低分子となり吸収され皮膚に届きます。
アトクリア
・アトクリアはお肌のトラブルや腸のお悩みを抱えている方におすすめのサプリメントです。
・吸収が速い「ECM・Eヒアルロン酸」が600mgも含まれており、潤いをキープしつつ、「K-2乳酸菌」で内側からケアできます。
これらのサプリメントは、アトピー性皮膚炎の症状緩和に役立つ可能性があります。ただし、効果を感じるためには継続的な摂取が大切です。また添加物に注意し、自分に合ったものを選ぶことをおすすめします。
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食事管理については、ヒスタミン反応を抑えるために以下のポイントを考慮してください。
・ヒスタミンを多く含む食品(例:アルコール、発酵食品、保存料、加工食品)を制限する。
・新鮮な食材を選び、添加物を避ける。
・個々の体質に合った食事プランを作成する。
4. アトピー性皮膚炎患者の声とヒスタミンの体験談
アトピーの悪化やひどい痒みに悩むあなたへ
私の場合、アトピーが悪化しやすいのは、季節の変わり目やストレスが溜まっている時です。そんな時は、皮膚科で処方してもらった眠くなりにくい抗ヒスタミン剤を服用します。特に、花粉症の時期(2月〜5月)は症状が出やすいので、花粉を抑える効果も期待できる抗ヒスタミン剤を飲み続けています。
食生活も見直しました。ヒスタミンを多く含むナス科の野菜や果物、マグロやチーズは控え、乳製品、小麦、砂糖も控えるようにしています。すると、腸内環境が改善し、肌の調子が良くなったように感じます。
アトクリアなどのサプリメントを摂取している方々は、肌の乾燥感が軽減され、かゆみが和らいだと報告しています。ただし、個人差があるため、必ず医師と相談してから摂取することをおすすめします。
5. まとめ
ヒスタミンは、アトピー性皮膚炎の病態生理に重要な役割を果たしています。抗ヒスタミン薬は、かゆみ、炎症、皮膚のバリア機能障害などの症状を改善する有効な治療法となり得ますが、すべての患者さんに効果があるわけではなく、副作用もあるため、医師に相談しながら適切な治療を受けることが重要です。
食事の管理や補助的なサプリメントを使用することは、アトピー性皮膚炎の症状を緩和させるのに役立ちますので試してみるのもいいでしょう。
アトピー性皮膚炎治療に役立つ情報として、以下の記事でも紹介しています。
ぜひ参考にしてくださいね。
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執筆者について
プロフィール
フリガナ: ワカヤマ ヒサト
名前: 若山 尚登
保有資格: 薬剤師、日病薬薬学認定薬剤師、YMAA認証マーク資格
職業: 薬剤師
経歴:薬学部卒業後、製薬会社にてMRを経験したのち、病院薬剤師へ転職。現在は病院薬剤師として働きつつ、医療ライターとして医療・薬に関わる記事の執筆に取り組んでいます。
自己紹介: 自身の経験を生かした幅広い視野で、医療の現場を伝えていくことがモットーです。薬剤師としてだけではなく、一医療人として人々の健康に役立ちたいと日々勉強に励んでいます。